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プロローグ -- 本編 12 ・ 3
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         番外編 1
1-4

ここは何処だろうか。

私は誰なのだろうか。

いや、そもそも私は何なのだろうか。

自分という感覚がない。

浮いている。

空気のように。

違う。空気はそこに存在しているだけで、
自らの意思で浮いているわけではない。

私はどうなのだろうか。
この不安定な感覚は私の意思で生じたものなのだろうか。
そして、この不安定な思考を不安に感じてしまうのは何故だろうか。
これは恐らく死に似た感覚。

何故経験したことがないのにそう思うのか。

生を知っているから、それを比較対象にして死を視ているというのか。
何という傲慢。私は生の、死の、何を知っているというのか。
心臓が動いている。息を吸い、そして、吐いて。それで何がわかると?
他人と共存し、社会に共棲し、認識を共有した。それだけで何を知ったと?
楽しかった。悲しかった。苦しかった。それが生の全てだとでも?
そんなちっぽけなものを失うのが怖いから、今を不安定に感じ、そして不安に駆られるのか。
今の私に何がある?大気を漂っているだけのこの私に。

名前も、

記憶も、

そして、

力もない、

―――こんな私に。
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