ここは何処だろうか。
私は誰なのだろうか。
いや、そもそも私は何なのだろうか。
自分という感覚がない。
浮いている。
空気のように。
違う。空気はそこに存在しているだけで、
自らの意思で浮いているわけではない。
私はどうなのだろうか。
この不安定な感覚は私の意思で生じたものなのだろうか。
そして、この不安定な思考を不安に感じてしまうのは何故だろうか。
これは恐らく死に似た感覚。
何故経験したことがないのにそう思うのか。
生を知っているから、それを比較対象にして死を視ているというのか。
何という傲慢。私は生の、死の、何を知っているというのか。
心臓が動いている。息を吸い、そして、吐いて。それで何がわかると?
他人と共存し、社会に共棲し、認識を共有した。それだけで何を知ったと?
楽しかった。悲しかった。苦しかった。それが生の全てだとでも?
そんなちっぽけなものを失うのが怖いから、今を不安定に感じ、そして不安に駆られるのか。
今の私に何がある?大気を漂っているだけのこの私に。
名前も、
記憶も、
そして、
力もない、
―――こんな私に。 →次へ